研究者からのメッセージ

ミャンマー クーデターから2年に寄せて

2023年2月1日に議員会館で行われた「ミャンマーに民主体制と平和と自由を取り戻す院内集会」にて、日本の研究者がメッセージを寄せました。こちらに動画と全文をご紹介します。(2023.02.01)

●根本敬(上智大学教授)

https://youtu.be/wJcgjlKnyvc?t=3747

 

高橋ゆり(オーストラリア国立大学講師)による各メッセージの代読

https://youtu.be/wJcgjlKnyvc?t=4208

 

篠田英朗(東京外国語大学教授)

 先が見えない日々が続きます。ミャンマーに暮らす方々は、寂しい思いをしながらも、やむにやまれぬ思いで、毎日を生きていらっしゃることと思います。決意を持ってミャンマーの未来のために苦難をかえりみずに努力を重ねていらっしゃる方々に、あらためて敬意を表したいと思います。

 ひるがえって日本のあり方を見るならば、煮え切らない態度に終始しており、残念な気持ちは、この2年間変わることはありません。少子高齢化社会が進み、力のある高齢者に牛耳られて萎縮している日本社会の姿が、そのまま反映されたかのようなミャンマー外交のあり方は、今後の日本の未来に不安を抱かせるものです。

 ミャンマー情勢を見て痛感するのは、人は困難にぶつかったとき、どのように生きていくか、真剣に問い直さなければならなくなる、ということです。他国の友人が困難に立ち向かっている姿を見て、何も感じない日本人の姿は、非常に残念なものです。自然災害後の復旧には黙々と取り組むとされる日本人ですが、自らが信じる価値観を問い直されるような事態では、ただ狼狽していくだけなのでしょうか。

 アジアの友人であるミャンマーを見る姿勢を通じて、日本の未来が見透かされています。日本の外交姿勢が、政治の在り方が、問い直されています。

 

日下部尚徳(立教大学准教授)

 ミャンマー国軍は2017年8月にロヒンギャ集落で大規模な軍事作戦を実施し、数千人を殺害、100万人近くの人びとがいまだに難民生活をおくっています。そして2021年2月の軍事クーデターのあとにも民主化を求める人びとを殺害し、多くの避難民が発生しています。どのような政体であれ、武力によって自らの主張を押し通すことは認められません。

 日本政府は、クーデターによって帰還がより困難になった100万人のロヒンギャ難民の命を守ると同時に、難民を受け入れているバングラデシュのホストコミュニティーへの支援を徹底すべきです。同時に、自らが公平に行なわれたことを確認している2020年11月の総選挙で選出された議員や少数民族の代表が含まれる国民統一政府(NUG)への支持を明確にし、暴力によらない民主主義による国家建設に全面的に協⼒する姿勢を見せるべきです。

 

●今村真央(山形大学准教授)

 2年前のクーデター以来、ミャンマー国軍は正当な権利を求める国民を暴力で黙らせようとしています。残虐な恐怖政治を日本国民は支持していません。

 この国軍には正当性も統治能力も欠けています。国軍が国土全域を支配下に置いたことは一度もありません。内戦は1948年から絶え間なく続き、その終わりは全くみえません。

 大義は暴政に抗するミャンマー市民の側にあります。自由と平和を求めるミャンマー市民に向けて、この2年のあいだ数多くの日本国民も応援の声をあげてきました。日本政府はいまこそ対ミャンマー政策を見直し、幅広い人道支援活動を積極的に展開するべきです。

 

福永正明(岐阜女子大学南アジア研究センター)

 民主主義を破壊した「軍クーデーターから2年」という日を迎え、多くのビルマの人びとと共に強い怒りを表明します。そして、苦難の立場におかれている人びとに連帯します。

 私のお伝えしたいことは、基本的なことです。すなわち日本政府は、1)2020年の総選挙が公正に実施されたことを認め、2)2021年2月1日の軍クーデーターは、民主主義を破壊するものであり絶対に容認できないことを確認し、3)国会の両院決議に従い、「クーデーター軍政」との関係を断ち、NUGこそが正当な政府と承認すること、4)NUGとの新しい両国関係を築くため、在ビルマ駐在丸山市郎大使、笹川陽平「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」を更迭・解任し、外交関係を刷新すること、5)対ビルマ政商の渡辺某らを排除し、NUGとの協力により、新しい二国間の経済関係を作り上げること、6)日本社会で暮らすビルマの人たちへの全面支援、などです。もちろん、不当な「クーデーター軍政」は、直ちにすべての逮捕拘束者を解放するべきです。

 在日ビルマの人たちは、これまで2年間の毎週末、各地駅頭で「クーデーター軍政」反対、ビルマの人たちへの支援を求め続けています。募金額報告によれば、日本社会での関心は、まだまだ高いと信じています。

 さらに私たちは、最重要テーマとして「民主主義の回復!」「NUGの承認を!」と掲げ、訴え続けるなければなりません。

 ビルマの人たちの命、生活、人権を守ることは、日本の私たちに直結した問題だからです。

 本日のご盛会を飛躍点として、さらなる民主化を求める「クーデーター軍政」反対運動、NUG政府支持の活動が広まることを心より祈念します。

 

高橋ゆり(オーストラリア国立大学講師)

 ミャンマーで起こった軍事クーデターとその後の経緯については、海外に住む多くのミャンマー出身者と同様、海外在住日本国民も注視しています。日本国外務省の公式サイトは、日本と世界の諸国間との関係を理解するに信頼すべき情報が得られる一つの重要な媒体と私は見ております。ミャンマーで公正と認められた選挙の結果が覆され、国民の抗議が軍事的暴力によって抑圧され続けてちょうど2年。外務省公式サイト内の項目「ミャンマー連邦」では本日、令和5年(2023年)2月1日現在、過去2年間は全くの白紙になっています。軍事クーデターが起こったことすら書かれていません。同ページの英語版も過去2年間、ブランクとなったままです。アジア近隣諸国の項目を見てもこのような国はミャンマーだけです。なぜ、外務省は、日本政府は、その見解を日本国民に向けて明らかにしないのでしょうか。それは情報の隠ぺいであり、納税者である国民への義務不履行です。ただ、同サイトは現在もミャンマーはアウン・サン・スー・チー国家最高顧問率いる国としています。記載の通り、日本政府が一層、民主国家への道を求めるミャンマー国民、それを支援する日本国民や世界の人々と手を取り合い、国民統一政府(NUG)との連携を強化していくことを願ってやみません。

 

外務省公式サイト

https://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html

 

外務省公式サイト内「ミャンマー連邦」

日本語 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/myanmar/index.html

英語  https://www.mofa.go.jp/region/asia-paci/myanmar/index.html